放射線技師仲間
 放射線技師の仲間を語る場合には、やはり研究会の仲間になる。技師になって最初にお世話になった勉強会が大阪消化管撮影技術研究会であった。


            

     
   胃X線写真(立位充満像)          大腸X線写真(横行結腸)
            撮影は私           写真提供:森永宗史氏(伊藤クリニック)


この胃(写真左)の撮影時には、十二指腸まで観察するためにBa(バリウム)をあえて十二指腸下降脚まで流して、そのBaを患者さんのローリングと透視台のピッチングを利用し、再度胃の中へ戻しています

 職場で消化管撮影をやるようになり技師学校で習った知識は基本的なことばかり、実際の臨床現場ではほとんど役に立たない。
患者さまを相手に失敗が許されない世界だと痛感したからであった。

 幸い、私の場合は学生時代の同級生がこの研究会に数人参加していたこともあり、ここでお世話になることにした。いざ研究会に参加してみると、この研究会のレベルの高さに驚いた。今まで聞いたことのないような用語Ua、Ub、Ucの言葉が交錯し、「なんじゃここは、2年生の担任の集まりか!」と思ってしまった(笑・・・)。後々分かるのであるが、これは早期癌の形態分類であった。また、胃X線写真一枚一枚にもそれぞれ撮影した方々の意図があることを教えてくれた。そこで行われていた読影会のレベルの高さにも驚かされた。この研究会に参加していた先輩諸氏、なんと立位充満像一枚で病変の存在部位、良性か悪性かまで当ててしまうのである。当初はマジックそのものであった。ここで初めて、病理組織学の理論に基づき体系化された読影学を学ぶ。読影会の最後には決まって、読影結果が正しかったかどうかを確認するために病理診断結果のプレパラートが提示され、そのプレパラートまで読影するのである。この人たちは同じ技師なんだろうか、いや、医師の域に達する方々だなと、尊敬を超えて畏敬の念さえ抱いた。

 この研究会のおかげで自分のレベルの低さを早い時期に気付き、その後はほとんどといってよいほど毎週・隔週の土曜日にはいろいろな勉強会へ参加するようになった(大阪では土曜日には、常に色々な勉強会が開催されている)。


              
         
胃癌の切除標本          プレパラート標本の切り出し割面
       
九州がんセンター症例集より        九州がんセンター症例集より


 私が今やっている胃癌の自動診断の研究も、若いときにこの勉強会で得た知識を基に、プログラムのほうは大分大学大学院、松尾孝美教授にご指導頂きながら研究を進めている。この勉強会でお世話になった先輩、同僚、その他の技師仲間にはこの場を借りてお礼を申し上げます。

 技師にも色々な人がいる。免許を取得したらそれで一人前と考え、勉強会など参加しない人。この話のように、技師になってもさらに上を目指してポテンシャルを上げていく人もいる。生涯勉強を実践するということはなかなか大変な事だと思う。しかし、我々が仕事をして対価(給料)を得るところは、病んだ患者さまが病を治しに来る病院である。そこで働く我々が、生涯、撮影技術や病気の勉強をしていくのは当然ではないだろうか。たぶん病院から頂く給料の中にはスキルアップへの期待料も含まれていると思います。

 最後に、若い技師さんたちには、常に高い目標を持ちその目標に少しでも近づけるように努力して頂きたい。目標(ポテンシャル:位置エネルギー)が高ければ高いほどエネルギーは消費しなくてはならない。つまり、努力しなくてはいけないが、達成した時の喜びは何物にも代えがたいものとなるでしょう。
 患者さまのために、病院のために、そして自分のために是非早いうちから積極的に色々な勉強会へ参加して頂きたい。


《親父の苦言!》
 自分が勉強しようとする分野の本は、出来ることなら自分のお金で買いなさい。なぜなら、自分のお金で買った本なら、毎晩抱いて寝るほど大事にするしページが破れるまで熟読します。
 未だに職場で本を買ってもらおうとする人がいますが、本に対する思い入れが全然違います。

 私が子供(小学校低学年くらいだったかな?)のときですが、家の中を弟と走り回り遊んでいました。そのときに、知らずに父親が大事にしていた物理学の専門書を踏みつけてしまいました。すると父はえらい剣幕で私と弟を正座させ叱るのです。「この本は学者さんが何十年もかけて勉強され書かれた本である。その本を踏むということは、書かれた学者さんへの冒涜(ぼうとく)だ」というのである。
 当時は何の事かもよくわからなかったが、今ではこの言葉の意味(重み)がよく分かるようになった。

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